井の頭線の池ノ上駅から徒歩数分の距離にあるイタリアンレストラン「ペペロッソ(PepeRosso)」
こちらはイタリアの郷土料理をいただけるお店で、食べ慣れない食材、調理法に出会え、料理そのものが芸術性に富んでいます。「凡庸」や「退屈」から遠い刺激的なメニューが特徴です。
しかも、単に珍奇を愛でるだけではなく、発想のブレイクスルーを料理という表現方法を用いて提案されている。いただいていて、そういった印象を受けます。一種の貴族趣味だと思いますし、本当に贅沢な料理の楽しみ方です。
そんな貴重な体験ができるぺぺロッソにお誘いいただき、今年もクリスマス限定メニューをいただきました。
ジビエ肉のブロード。その肉の正体は?
コース料理の突き出しにブロードをいただけるとのことで、いくつかの器の中から選びました。
冬の寒い日にありがたいおもてなしです。
器にはハーブ類とパルメジャーノ。注がれるのは温かなジビエ肉のブロード。
飲んでみてチーズのコクとハーブの芳香の中から出てくる癖の強い獣臭を感じました。正体はカラス肉です。
カラス肉といえば、小泉武夫先生の食のエッセイ『不味い!』にカラスのお話があり、肉に線香に似た独特の匂いがあると書かれていて、機会あれば食べてみたいと思っていました。まさかイタリア料理で出会うことになろうとは。
はじめてカラス肉の料理を賞味、しかもあまりにも意外な形で、というのもカラスの姿形のないスープでいただいたことに、不思議な感慨を抱きました。
これがカラス肉かという味です。姿形は見えなくても、はっきりと主張のある味です。
好き嫌いが分かれる味だと思いますが、私は苦手でした。
伊勢海老とホッキ貝の饗宴
青皿に魚介類が映える美しい料理です。
伊勢海老とホッキ貝に発酵トマトの酸味とマジョラムがよく合いました。
クリスマスの肉の代わりに食べる鰻
丸めた鰻のフリット。甘いバルサミコソースがかかっています。
クリスマスに肉を食べず鰻を食べる地域があり、その文化に因んだお料理だそうです。
鰻は中の方がほんのりレアで山椒が入っていました。揚げた鰻が甘いソースとよく合います。
どこか和を感じる組み合わせ。
トロトロの豚皮に包まれてザンポーネ
豚皮にミンチを詰めたザンポーネ。イタリアの年末年始の定番料理らしく、レンズ豆とともにいただき、食べるとお金持ちになるという縁起を担ぐ料理なのだそうです。豚皮が極限まで柔らかく、唇でほどけるほど。官能的食感です。
ぺぺロッソのシェフ今井和正さんのインタビュー記事にザンポーネと同じくクリスマスの定番コテキーノのレシピと詳しい紹介がありました。
イタリアの年末年始に欠かせない料理、ザンポーネとコテキーノってどんな味?
初めて食べるヌートアリアの味
お次はヌートリアです。とサーブしていただき、一瞬耳を疑いました。
ヌートリア。ヌートリアってあのカピバラに似た、あのヌートリア?
ヌートリアの平和そうな姿が脳裏に浮かびました。食肉になっていたんですね。
兎肉の代わりにヌートリアをトルテリーニに詰めたそうです。それに4種の天然キノコのソースとさらに上から松露をどっさり。トリュフ同様にその場で削ってもらいました。削る側から芳香が。
初めて食べるヌートリアの味は淡白で豚肉に近く、後味にほんのりと癖があります。でも、その癖を松露の香りが打ち消しています。
松露はトリュフとは香りも味も全く別物。松の香りというか苔に似たツンとした香りがして、山の中を歩く時の匂いがしました。
鴨のローストはあくまで香ばしく
メインは鴨とササミ肉のロースト。パースニップのポレンタ添え。
鴨肉がとても柔らかく、皮がパリパリとして香ばしいです。
特製の燻製器でお店で燻して供してもらいました。
りんごのソルベとホースラディッシュ、オリーブオイル
ドルチェ①
りんごのソルベにビーツのソース、オリーブオイル、ホースラディッシュ添えです。
一口食べるとりんごが強い。でも、ホースラディッシュの辛味が入り、オリーブオイルとビーツでまとまる不思議なドルチェです。
ぺぺロッソ自家製のパネットーネ
ドルチェ②
今年二度目のパネットーネをいただきました。ザバイオーネをたっぷりと。
パネットーネはイタリアの伝統的なクリスマス菓子。カスタードにマルサラワインなどを入れた甘いザバイオーネと共にいただくのだそうです。このザバイオーネが相当に甘いです。
昨年はお店がお取り寄せしたパネットーネをいただきましたが、今年はぺぺロッソ自家製のパネットーネ。
昨年よりも軽い口当たりです。それでも、卵の味が濃厚なザバイオーネがヘヴィーなボリュームで、満足感と満腹感が坂道を駆け上るように急上昇しました。きっと血糖値も。この食べ応え、流石イタリアンです。物足りないと料理が言わせない。
おわりに
初めて食べるカラスのブロードにヌートアリアのトルテリーニ。
未知の体験の連続で旅をしている気持ちになりました。
料理は食べてしまえばなくなってしまう。でも心に残り続ける。そして料理する方と食べる方の両方があって初めて成立する。料理って奥が深い、面白い、そして儚いと改めて思いました。
「ペペロッソ(PepeRosso)」のお店情報
住所 東京都世田谷区代沢2−46−7エクセル桃井1階
営業時間 ランチ12:00〜16:00(L.O. 15:00)ディナー18:00〜23:00(L.O.22:00)
電話番号 03-6407-8998
アクセス 京王井の頭線池ノ上駅徒歩1分
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