イタリア料理の名店「ペペロッソ(PepeRosso)」。井の頭線池ノ上駅から歩いて数分の商店街の中にあるお店です。一見して、外観はカジュアルなレストランですが、料理は非常にマニアック。珍しい食材を、日本ではあまり馴染みのないイタリア各地の郷土料理に仕立てられています。
珍しい食材を洗練した手法で仕上げる料理はまるで芸術作品のようです。芸術作品に不可分な思想や哲学も料理から感じ取ることができます。
この素晴らしい体験ができるお店「ペペロッソ(PepeRosso)」へ、2020年10月にお誘いいただき行ってきました。「シェフのおまかせコース」、秋らしくきのこ尽くしのコースメニューでした。
滑らかな「さくらしめじのヴェルッタータ」
滑らかな舌触りのヴェルッタータ。ポタージュとクリームの中間のような食感です。食べると濃いキノコの味がパッと口内に広がります。中央にあるのはマスカルポーネ。マットな質感のグレーのお皿に艶やかなヴェルッタータがよく映えていました。
繊細にして華やかオオニジマスのマリネ
花が咲いたような一皿。パンを発酵したソースをニジマスのマリネで包んでいました。ナデシコ、四葉のクローバー、削ったホースラデッシュが散らされています。中央には鱒の卵。このソースはひなあられのような優しい味がしました。
ふかふかの焼きたて自家製パン
ぺぺロッソ自家製の焼きたてのパン二種。一つは焦がし小麦で焼いたのだそうです。ふかふかで美味しいです。
かぼちゃのクレマ ラルド添え
美術作品のような美しい一皿。青い皿に絵の具のように右端に置かれたかぼちゃのクレマ。この色彩が素晴らしく、食べるのが勿体なくなりました。添えてあるのはラルドと金箔。食べる前に熟成バルサミコをかけてもらいました。甘くコッテリとしたかぼちゃのクレマにラルドの塩気がよく合っていました。
カエル肉とイタリアンパセリのパスタ(リゾーニ)
一見してリゾットのように見えますが、これはリゾーニ。極小のパスタです。米状の小さなパスタで、米とは全く違う、表面はつるんとして、噛めばぷりぷりとした歯応えがあります。具はカエル肉とイタリアンパセリ。パルミジャーノの後味がしました。
カエル肉をパスタで食べるということがまず意外でした。イタリア料理でカエルの肉を食べることも驚きです。カエル肉は鶏肉よりも癖がなく、魚と鶏肉の中間のような美味しい肉です。この淡白な味わいの肉とリゾーニに合い美味しかったです。
シャコと亀の手(カメノテ)と天然きのこのパスタ(ストラングイエ)
これもまた珍しい亀の手(カメノテ)を具材に使ったパスタ。亀の手(カメノテ)は御徒町の吉池で物珍しさから購入したことがあります。磯の味が濃く、身は柔らかく、そのまま茹でるだけでも美味しかったです。茹で汁にも深い磯の味が出ました。
そのカメノテがシャコとともにイタリア料理のパスタに仕上げられていました。ソースはニンギョウタケなど八種類の天然キノコを使ったもの。海の幸と山の幸が混じり合ったメニューです。
パスタは手捻りの手打ちパスタで、くるりんと巻かれた形にソースがよく絡んでいました。
マジョラムの甘い香りがアクセントになっています。
料理に使われているきのこはキノコハンターの方が採ってきた天然キノコなのだそうです。大きな黒舞茸を見せていただきました。
脳みそまでいただく小鳩のロースト
メインは小鳩のロースト。豚の形のテラコッタで、葡萄の木と葉で燻して仕上げたものだそうです。一羽丸ごといただきました。
モモ肉、胸肉に、ハツ、レバー、肺、砂肝、脳みそまで。石のような質感のお皿に散りばめられた肉が艶かしい、官能的料理。生贄をいただいているような背徳感もありました。
繊細な肉質。柔らかい胸肉が美味しかったです。脳みそは濃厚で白子のよう。
バラエティ豊かなチーズ盛り合わせ
ドルチェの前のチーズです。ハードタイプ、ウォッシュタイプ、ブルーチーズと揃っています。それに、イチゴ、ドライフルーツ、ピスタチオを削ったもの、りんごの蜂蜜でした。
サボテンの実のソルベ
ドラゴンフルーツのソルベです。さっぱりと甘酸っぱく美味しいです。ヴェルッタータ同様にマットなグレーのお皿にカシス色のソルベがよく映えていました。
アケビとスイートトリュフ&ババ
二つ目のドルチェは、アケビにスイートトリュフをたっぷりと載せたもの。それにお酒の効いたババ。その名の通り、甘い味のトリュフでした。それに、仄かな苦味のあるアケビの組み合わせが不思議な味です。ドルチェに至るまできのこ尽くしでした。