日本の漆器の美しさは、そう云うぼんやりとした薄明りの中に置いてこそ、始めてほんとうに発揮されると云うことであった。床柱や天井なども黒光りに光っているから、行燈式の電燈でも勿論暗い感じがする。が、それを一層暗い燭台に改めて、その穂のゆらゆらとまたたく蔭にある膳や椀を視詰めていると、それらの塗り物の沼のような深さと厚みを持ったつやが、全く今までとは違った魅力を帯び出してくるのを発見する。
谷崎潤一郎『陰翳礼讃』
河津桜見物と合わせて、伊豆稲取に足を伸ばし、雛のつるし飾りも見に行こうと思っていました。
稲取文化公園 雛の館
つるし雛の会場である稲取文化公園は伊豆稲取駅から15分程の場所にありました。公園内に河津桜、紅梅、白梅が咲き美しいです。


絢爛豪華なつるし飾り

こじんまりとした建物を入ってすぐに受付があり、さらに奥に進むと目に飛び込んできました。
きらびやかな雛人形とつるし飾りの数々。
雛飾りと陰翳礼讃


雛壇の周りにつるし飾りが施され、立体的でえもいわれぬ豪華さです。そして、見て回っているうちに建物内の暗さが雛飾りの艶かしく美しく見せていることに気づきました。
雛飾りの細工は金や朱など派手な色合いのものが多いです。それが薄暗いところで映える。谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を思い出し、ああ、これが陰翳礼讃、日本の美の愛で方なのだと合点しました。



視界の端が闇に溶ける様子が美しいです。
金目鯛の鯛の鯛

縁起物であり、名産の金目鯛の「鯛の鯛」鯛の形をした骨がつるし飾りになっていました。私はこれがいちばん好き。

大漁と漁の安全を祈願する雛飾りもありました。釣りをする人形、金目鯛、クラゲ、タコ、イカのつるし飾りが愛らしいです。
雛のつるし飾りとは

雛のつるし飾りは江戸時代から伝わる伊豆稲取独自の風習らしく、雛人形の代わりに着物の切れ端で作った人形などを吊るして飾ったことがルーツだそうです。
飾るモチーフはさまざま。縁起物の巾着、香袋、柿、這い子人形、桃、ほおずき、金目鯛などが飾られ、それぞれにいわれがあります。

日本三大つるし飾り
伊豆稲取の「雛のつるし飾り」の他にもつるし飾りの風習が存在し、九州柳川地区の「さげもん」、山形酒田地区の「傘福」と合わせて、日本三大つるし飾りに数えられているようです。
雛のつるし飾りを見られる場所
毎年1月下旬から3月末にかけて、今回行った稲取文化公園を含むいくつかの場所で雛のつるし飾りの展示がされています。
- 稲取文化公園雛の館
- 雛の館「むかい庵」
- 素盞嗚神社雛壇かざり
この他に、協賛会場のふたつぼりみかん園、なぶらととでも展示が行われています。
公園内は河津桜と梅が咲き乱れる



公園内では河津桜、紅梅、白梅が同時に咲き、こちらも楽しむことができました。
敷地内には足湯処があり、無料で利用できます。公園から数分歩けば海に出られ、美しい伊豆の海も堪能できました。なんていいところ。この後、素盞嗚神社にも行きましたが、あまりの行列に断念。またリベンジしたいと思います。


雛のつるし飾り「文化公園 雛の館」の基本情報

開催期間 2022年1月20日〜3月31日
住所 静岡県賀茂郡東伊豆町稲取1729
電話 0557-95-2901
最寄駅 伊豆急伊豆稲取駅
入館料 500円
時間 9:00〜16:00(最終受付15:30)
