【食虫植物】ウツボカズラ飯のレシピの謎と失敗エピソード

食べる

ウツボカズラ飯。

食虫植物のウツボカズラの袋を使ってお米を炊く料理がマレーシアにあると聞いたのは今から15年くらい前のことでした。

ウツボカズラ

その話をしてくださったのが恩師であり、野菜研究家の永田洋子さん。その話題がきっかけになり、親しくさせていただき、以降マレーシア、インドネシアの野菜取材の旅にもご一緒させていただきました。

そして、同時に、ウツボカズラ飯なる奇妙な料理は常に私の心の中に居座り続けました。

ウツボカズラ飯の話を聞いた当初、私は食虫植物の栽培を始めたばかりで、観葉植物としての印象が強かったのです。そんな植物が、料理に材料に使われている事実に衝撃を受け、好奇心をくすぐられもしたのです。

植物であるにもかかわらず虫を食べてしまう植物の存在でさえ、ミステリアスでユニークなのに、それを、さらに人間が料理して食べてしまうのです。こんな奇怪な料理はなかなかないのではと思います。

どんな味か確かめてみたくて文献を探したり、ネットの情報を拾いました。また、マレーシアに行った際に現地ガイドに話を聞き、中の具や味を教わりました。

ウツボカズラ飯とは?存在するいくつかのレシピの謎

調べた結果、ウツボカズラ飯は、マレー語でLemang Periuk Kera(レマン プリク ケラ)といい、マレーシアの伝統料理でした。マレーシアだけではなく、フィリピン、インドネシアとウツボカズラが自生する地域で作られてきたようです。

基本はよく洗った捕虫袋の中に米を詰めて、ウツボカズラの袋ごと熱を通す料理です。

レシピは何通りかあり、いずれもふんわりとし、分散した情報でした。

いくつかの情報をまとめると、熱の通し方は、蒸すことがわかりました。

味付けはココナツミルクと塩ココナッツミルクと砂糖で味付けしているようです。

具は赤豆、鶏肉、エビなど様々です。

マレー民族の間では、元々レマン(Lemang)という伝統料理があり、ココナッツミルクと塩、もしくはココナッツミルクと砂糖で味付けをした餅米をバナナの葉で包み、竹筒で蒸す(焼く)料理で、イスラム教の断食明けのお祝いとして、牛肉のレンダンとともに食べるのだそうです。

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レマンとレンダン pixta

マレーシアのサバ州の屋台で見かけました。

その竹筒とバナナの葉代わりにしたのがウツボカズラなのかもしれません。

ウツボカズラは中の消化液を飲用水にされることもあり、消化液を溜めているつくりから、液体が漏れることも少ないでしょう。

この竹筒料理のレマンについては、ボルネオをご一緒した野生動物研究の安間繁樹先生に教えていただきました。

ウツボカズラ飯(レマン プリク ケラ)の再現と問題点

ウツボカズラ飯を再現するべく、ウツボカズラの捕虫袋に生米を入れて、ココナッツミルクを注ぎ、ウツボカズラの袋が入るくらいの大きさの30センチくらいの直径のある蒸し器で蒸しました。

使用したウツボカズラのはこれらの種類でした。

・ネペンテス・アラタ

箱根湿生花園にて撮影

・ネペンテス・ヴェントリコーサ

・ネペンテス・ダイエリアナ

袋の入り口が広い袋が中にお米を入れやすいです。また、袋の入り口の襟の表面がギザギザしているためにお米が引っかかりやすいので、サジの部分が小さく細いスプーンで無理やり押し込みました。

現地で使われているウツボカズラの種類は、アンプラリア、ミラビリス、ヴィーチだそうです。特にアンプラリアは汁碗のような形の袋なので、お米を入れやすそうです。

アンプラリア(兵庫県立FCにて)
ヴィーチ

また、あとでわかったことですが、現地だと袋の襟の部分をカットしてしまうことが多いようです。

火の通し方の難しさ

米を1晩水に浸し、ココナッツミルク、砂糖と混ぜて、捕虫袋の中に入れて、残りのココナッツミルクを捕虫袋の中に注ぎ蒸します。

一番の問題は火の通し方の難しさでした。

最初15分ほど火を通したところ、中のお米が硬いままでした。捕虫袋の大きさにもよりますが、最低30分は火を通す必要がありました。また、捕虫袋の中でお米が膨らむので、捕虫袋いっぱいに米を入れてしまうと破裂してしまいます。

水分も足りないとお米が硬いままなので、捕虫袋に三分の一程度入れて、ココナッツミルクは捕虫袋7割くらいまで入れて、30分ほど蒸すとちょうどいい蒸し上がりになりました。それでも、中の米が硬いことがままあり、もっと柔らかく美味しく炊けないのだろうかと思いました。

ウツボカズラはその形状ゆえに蒸しにくい

しかも、ウツボカズラの袋になった形は底が丸く、蒸し器に並べると安定して並べることができず、倒れてしまうのも厄介でした。倒れると、中のココナッツミルクと米が出てしまいます。

安定して並べるのには数が必要だと思いました。

蒸し器いっぱいの袋を並べれば、互いの袋どうしが支え合い、倒れません。

紙コップに入れて蒸す方法も行いましたが、やはり、火の通り方が甘くなってしまいます。

蓋の空いていない捕虫袋を使ってみたらどうか?

ウツボカズラの捕虫袋は消化液に落ちた虫を消化して、吸収し、自身の栄養にする植物です。

ウツボカズラの捕虫袋は最初蓋が閉じた状態で葉の先端につき、徐々に膨らみ、中に消化液をため、成熟するに従い蓋が開き、虫を捕まえるようになります。

蓋が開いた後のウツボカズラはよく洗っても、底の方に洗い残しの虫があることに気づくことがありました。そこで、蓋の開いていない捕虫袋をウツボカズラ飯に使ってみてはどうだろうと思い、使ってみたところ、蓋が開いていない時点では柔らかすぎて、火を通すとふにゃふにゃと形を保たなくなってしまうのでダメでした。揚げたり、茹でたりしても同じことです。

ウツボカズラの入手の難しさ

ウツボカズラ飯を作るにあたって、調理法も難しいですが、ウツボカズラを入手することの難しさが立ちはだかる障壁になります。

私の場合は幸いなことに、ウツボカズラの生産者さんのご協力を得て、これまで作って来られました。

ウツボカズラをはじめ食虫植物の専門店がありますので、そこでウツボカズラの苗を入手することができます。ただし、あくまで観葉植物として販売されていて、食用では販売されていませんので、その点をご留意ください。

ウツボカズラを茹でてみたらどうだろうか

竹筒料理の話を聞いたり、写真を見ていたところ、横塚真己人さんの『ボルネオの熱帯雨林―生命のふるさと』(福音館書店)の、大鍋にウツボカズラ飯を入れて茹でている写真思い出し、ウツボカズラを袋ごと茹でてみたらいいのではと思いました。

これはなかなかの成功でした。

袋ごと茹でることによって、中のお米が柔らかく炊けます。生米から蒸している時より、ずっと仕上がりが食べやすい柔らかさになります。

しかし、この方法も問題点があり、茹で時間が長すぎると、袋が破裂してしまいます。

しかも破けて中身が茹で汁にこぼれ出し、収拾がつかなくなります。

破裂してしまうのは10個茹でたとして、1から3個ほど。

日本では貴重なウツボカズラの袋だけに、破裂してしまうのが残念で、どうにかならないかと思いました。そんな矢先に見つけたのが、食虫植物の専門家Stewart McPherson氏のウツボカズラの専門書『Pitcher Plants of the Old World Volume One』に乗っていたレシピです。

海外のウツボカズラの専門書に載っているレシピを発見

『Pitcher Plants of the Old World Volume One』は、ウツボカズラなどの袋を持つ食虫植物の各種類を丁寧に解説した本で、その中に発見史や利用の歴史などが書かれています。

本によると、東南アジア、特にボルネオで、ウツボカズラの袋が伝統的に調理用の器として使われてきたとあります。サバ州では、日本占領時代に米を炊く、クトゥパット(Ketupat)=ちまきのような料理を調理するのにウツボカズラを用いていたそうです。

そして肝心のレシピは、袋に米を入れる前に米をココナッツミルクで茹でるものでした。そして、半分火を通した米を袋に入れてさらに蒸すのです。

確かにそうすることで、米は柔らかくなり、袋が破れることもないでしょう。

レシピの詳細は以下の通りです。

  • 24個の大きな袋を丁寧に洗い、一晩水に浸けて、こまめに水を取り換える。
  • 袋の蔓を切る
  • 米をココナッツミルクと塩で茹でる
  • 2カップの新鮮なエビを刻む。カップ半分の紫玉ねぎを細かく刻む。一つかみのエビペーストと4、5本の唐辛子、新玉ねぎ、セロリの葉をすりつぶす。エビとすりつぶしたものを合わせて、香りが出るまで少量の油で揚げる。
  • 米が半分ほど煮えたら、火から鍋を下ろし、水で少し冷やす。袋の中に米を半量入れて、揚げたものをスプーン1杯入れる。さらに、残りの米を袋いっぱいに入れる。
  • 蒸し器に袋を立てて並べ、フタをして30分蒸す。もしくは茹でる。熱いまま、もしくは冷やして召し上がれ。

海外のウツボカズラの専門書に載っているレシピを再現

 『Pitcher Plants of the Old World Volume One』のレシピを再現してみました。

まず、ウツボカズラの袋を水に浸け、よく洗います。

米をココナッツミルクと塩で茹でました。焦げ付きやすいので弱火でゆっくりと火を通すのがいいです。また、ココナッツミルクをお米が吸うので、多めにココナッツミルクを用意する必要があります。2合に対して1リットルは必要でした。

エビと玉ねぎと青唐辛子を刻んで、エビペーストと合わせて揚げます。エビと玉ねぎをどのように合わせるのかよくわからなかったので、みじん切りにして、片栗粉でまとめて、揚げ焼きにしました。もしかしたら、すり身にするのかもしれません。

エビペーストにはマレーシアで買ったブラチャンを使いました。

ココナッツミルクで煮た米を袋の中に入れます。生米の時よりも粘りがあって、抵抗があり、なかなか袋の中に入っていってくれません。これは、襟の部分を切り落とした方が楽に入れられることでしょう。

中に米を半分入れたら、エビと玉ねぎ揚げを入れ、さらに米を入れてサンドします。そして蒸し器に並べます。お米が水分を吸い重くなっているので袋に安定感があり、並べやすいです。たとえ蒸し器の中で倒れたとしても、中身が溢れないので安心感もあります。

30分蒸したところ、今まで作った中でお米が最も柔らかく、オートミール状になっていました。ココナッツミルクと塩味があまり馴染みのない味で、食べ慣れるまで時間がかかりそうです。

ウツボカズラの香り、草の匂いがご飯に移り、柔らかいお米にココナツミルクの塩味、中からエビペーストの味がついた揚げたエビが出てきて、ブラチャン(発酵エビペースト)の味も相まって、異国情緒満載でした。

このプロセスは動画でもご紹介しています。

食虫植物で絶品料理「ウツボカズラ飯」を作ってみた/Lemang periuk kera/Rice in Pitcher Plant

ウツボカズラ飯料理まとめ

これまで様々なレシピでウツボカズラ飯を作ってみましたが、 『Pitcher Plants of the Old World Volume One』のレシピが最も問題点がなかったです。

このレシピの味付けをココナッツミルクと砂糖、米を餅米に変えてつくってみたら、さらに美味しいのではないかと思います。何かスパイスを足してもいいかもしれません。

また、コロナウイルス感染拡大が収束したら、再びマレーシアに行き、レマンとウツボカズラ飯の取材をしたいです。フィリピン、タイでも調べてみたいです。

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