マリアウベイスンとは
マリアウベイスンのベイスンは盆地のこと。
標高およそ1600メートルの険しい断崖に囲まれたすり鉢状の盆地です。この断崖によって隔絶された地は豊かな生物相を呈しています。食虫植物、ランなどの希少な植物、ウンピョウ、テングザル、シベット、ボルネオゾウなどの野生動物が息づいています。
1981年にサバ財団(Yayasan Sabah)によって保護区域として指定されました。
いよいよ登山。スタディーセンターからアガチスキャンプへ
マリアウベイスンスタディーセンター(MBSC)に一泊。翌朝、盆地の中に入ります。スーツケースをスタディーセンターに預け、車で登山入口のアガチスキャンプに移動。険しい断崖を登り、宿泊先のネペンテスキャンプへ。マリアウベイスン内は、宿泊してエリア内の動植物の観測ができるよう各スポットにサテライトキャンプが存在します。
MBSCの朝食はジャムたっぷりのトースト
出発前にMBSCの食堂に行き、テラス席に座りました。ビュッフェのトーストしていない食パン、目玉焼き、厚揚げをセレクト。トーストに甘いジャムをたっぷり塗り、コーヒーを飲む。景色が美しく、朝の風が気持ちいい。贅沢な時間でした。
珍客のテイオウゼミ
朝食時にテイオウゼミが現れ、虫好きのメンバーが大喜び。今回の旅に参加した人は誰もが動植物好きで、各々特に関心が強い分野がありました。
破壊されたアガチスキャンプ
朝食後にすぐに出発。食堂の冷水機の水を水筒に入れ、支度を整え。センター前に停めてある車へ。再びワゴン車に分乗し、登山入口のアガチスキャンプに向かいます。
車で1時間ほど走るとアガチスキャンプに到着しました。
アガチスキャンプは公式ページによると元々トイレ、シャワー付きの宿泊施設だったようです。野生の象に破壊され、今は見る影もありません。キャンプだった建物。荷物を整えたり、重さを計ったりするための小屋があるのみでした。
象の力恐るべし。
小屋でザック以外の荷物を預け、ポーターに運んでもらいます。登山道入り口へは急峻な下り坂で、この先の過酷さを予感させました。
登山道は急な崖の連続
旅のメンバーはネイチャートレッキング経験が豊かな人ばかり。登山経験の浅い私は隊列の2番目にしてもらいました。最前列はレンジャーとツアーリーダーの橋場さん。二人のお尻を追いかけるように登りました。
登山道入口に入るとしばらく激しい急斜面が続きます。
地形の険しさに加えて、ミストサウナの中にいるような湿度と温度が全身に纏わりつきます。吸う息も湿り気を帯び、キツい。滝のように汗をかきます。全身汗で濡れながらの登山です。
太い木の根が地面に血管のように張り巡らされ、間を這うように登ります。恐怖に慄きながら2本の金梯子をつないだはしご場を登り切り。しばらく進んだところで、あるものを発見しました。
枯れたウツボカズラの袋とウツボカズラの森
あるものとはウツボカズラの枯れた袋。足元に落ちているのを見つけました。すなわち本体が近くにあるということです。その後しばらくウツボカズラの本体は姿を現さず、登り降りした先の登山道脇に生えていました。ウツボカズラ(Nepenthes hirsta)が。
日の届かない鬱蒼とした木陰に生えていました。
ウツボカズラを発見した後、途中、シャクゾウソウの仲間やムヨウランに遭遇。
さらに奥地に入ると、なだらかな場所にNepenthes reinwardtianaが生えていました。
なんて美しいウツボカズラ。捕虫袋の内側の目のような二つの斑点が特徴的です。
Nepenthes reinwardtianaが生えている場所は苔が多く、樹木の根元まで盛り上がっていました。
ネペンテスキャンプへの距離が近づくにつれ、Nepenthes reinwardtianaだけではなく、Nepenthes stenophyllaも見ることができ、蘭の仲間も多くなりました。
突然の熱中症
ネペンテスキャンプまでの距離は約7.5km。植物を観察しながら歩いている内に持参した水がなくなりました。しばらく我慢していましたが、猛烈な喉の渇きに耐えがたくなり。先頭を歩いている橋場さんに事情をお話しして、水を分けていただきました。
いただいた水を飲んでも尚猛烈に喉が渇いていました。残り1kmと書かれた看板を見て、これなら大丈夫だろうと早く辿り着きたい一心で、とにかく登り続けました。
しかし、平地の1kmと登山道の1kmは全くの別物です。最後の急勾配を登り終えると、激しい頭痛に襲われました。
目的地のネペンテスキャンプに到着してすぐにベッドルームに直行し横になりました。大量の発汗に水分不足。おそらく軽い熱中症だったのだと思います。薬を飲んで30分程横になると頭痛が和らぎました。