【マレーシア】食虫植物の自生地で本場のウツボカズラ飯を食べた話①

旅とフィールドワーク

ウツボカズラ飯。食虫植物のウツボカズラの虫を捕まえる罠の部分にお米を詰めて蒸す料理。そんな料理が存在することを聞いたのはもう18年くらい前になります。その話をしてくださったのが野菜研究家の永田洋子さん。彼女がボルネオ島を訪れた際に、先住民族の村の長から直接聞いたのだそうです。

その話を聞いて、好奇心からこれまでに何回も再現し、色々なメディアで紹介してきました。

食虫植物料理「ウツボカズラ飯」とは?(レシピあり) | ふしぎな食虫植物のせかい|木谷美咲
ウツボカズラの捕虫袋に米を入れて炊くウツボカズラ飯について紹介していきます。ウツボカズラ飯とは?そもそも、ウツボカズラ飯とはなんでしょうか?食虫植物のウツボカズラ(ネペンテス)の捕虫袋の中に米を入れて...
再現してみたウツボカズラ飯
昆虫食でアレンジしたバージョン

しかし、これまでに本場のウツボカズラ飯に遭遇したことはありませんでした。これまで聞いた話や書籍で調べたことを元に再現してきたものの、本当のウツボカズラ飯はどのようなものなのか。ぜひ現地のウツボカズラ飯を体験したく、2023年12月にボルネオ島サラワク州クチンを訪れました。

現地のウツボカズラ飯に関するわずかな情報

まず問題は、ウツボカズラ飯にはどこで出会えるか、です。

2010年にクチンを訪れた際には、ドライバー兼ガイドがインドネシアとの国境付近の土産物屋で売っていたのを見たことがあると言っていました。具は豆や鶏肉だったと。後からこの情報は正しかったことがわかるのですが、その情報では正確な場所を絞り込めずにいました。

マレーシアの中でもウツボカズラ飯はメジャーではないようです。SNSを通じて、サラワクに住む方にお話を聞いてみても、ウツボカズラ飯自体がダヤックの文化であり、それほど関知されていないとのことでした。

試しにChatGPTに質問したところ、現地のコミュニティーに聞くようにと答えにならない答えが返ってきただけでした。

Xに投稿されたポストを頼りに

調べていた矢先に、有力な情報が飛び込みました。2022年12月7日。マレーシア政府観光局が写真付きでウツボカズラ飯紹介の記事を投稿。実に大きな手がかりです。

引用した方が、ここはシニアワンであると書いていました。更に前進です。シニアワンについて調べたところ、サラワク州クチン郊外のバウ地区にあること。そこを訪れるアクティビティーを行う旅行会社があることを見つけ、ツアーに申し込みました。

いざSINIAWAN(シニアワン)のナイトマーケットへ

シニアワンは州都クチンから西へ20kmほど離れたバウ地区の一角にあります。金、土、日の週末のみに夜市が催され、出店の中の一つにウツボカズラ飯が販売されているとのことでした。

クチン滞在3日目。日没前の18時頃、旅行会社InsarTourさんの車で向かい、シニアワンに到着しました。

シニアワンの街並み

木の建物に赤い灯籠が趣深いシニアワンのメインストリート。

この日はあいにくの雨でしたが、それでも屋根のあるところではさまざまな料理が売られていました。

シニアワン(新亜湾)の人口は3600人。ビダユ族が750世帯、中国人が700世帯、マレー人が100世帯だそうです。

本場のウツボカズラ飯との出会い

通り沿いを端まで歩くと、一際賑わっている一角がありました。そこには遠目からでもわかる、ウツボカズラ飯が売れられていました。

ウツボカズラ飯はちまきとともに販売されていました。InsarTourさんに聞くと、普段はそれほど人気の品ではないらしいのですが、たまたま関心を寄せられていたのかもしれません。

2種類のウツボカズラ飯

ウツボカズラ飯は2種類販売されていて、ピーナッツとココナッツミルク(santan)味とピーナッツと鶏肉入りでした。

ココナッツミルク(santan)味のウツボカズラ飯

ピーナッツとココナッツミルク(santan)味が3個でRM5.0。およそ150円。1個50円相当。

鶏肉入りウツボカズラ飯

鶏肉入りが1個RM3.0。およそ90円くらい

隣にはちまきがRM4(125円)で売られていました。

鶏肉入りとココナッツミルク味のウツボカズラ飯と2種類購入しました。購入したものはスーパーに備え付けてあるようなポリ袋に入れてくれました。InsarTourさんに聞いて貰ったところ、材料のウツボカズラの捕虫袋を採集しているのはビダユの人で、調理しているのはお店の方(中華系)とのことでした。

ウツボカズラ飯のお店の外観

お店にはウツボカズラ飯販促用のカーテン式の看板が吊るされていました。ウツボカズラ飯とともに、隣では竹筒料理も売られています。

ここでは竹筒で料理した鶏肉のスープが売られていました。

念願の現地のウツボカズラ飯を実際に食べてみる

雨が強くなってきたので、シニアワン内にあるビダユ料理レストラン「ビカラン(BIKALAN)」に移動。許可を得て、持ち込みでウツボカズラ飯をいただきました。

基本的にウツボカズラの仲間ネペンテス・アンプラリアの捕虫袋が使われています。自生地サイズで大きく、拳ほどの大きさもあり、そこにみっちりと餅米が詰められています。

食べ方は、バナナの皮を剥くように捕虫袋を指で裂きます。

ココナッツミルク(santan)味のウツボカズラ飯を食べてみる

まずはココナッツミルク味の方から。

捕虫袋に餅米がつき、剥くのにやや時間がかかりました。ココナッツミルクの油が餅米にまわり、脂っこく、味付けも濃く、お腹にたまる一品です。

鶏肉入りのウツボカズラ飯を食べてみる

鶏肉の具入りの方は、中程に大きな鶏肉が入っていました。味付けも塩辛く、しっかりと醤油味がついていました。こちらは中華ちまきに味が似ています。

本場のウツボカズラ飯を食べてみた感想

実際に食べてみて。長年聞き齧った情報で再現していた料理の本物を食べることができて、まずは一区切りがついたような達成感がありました。これだったのかという。

また思ったよりも脂っこく、お腹にたまる料理だというのが率直な感想です。

InsarTourの鍋嶋さんが「竹筒の方が使いやすいのに、最初に捕虫袋を使った人になぜ使ったのか聞いてみたい」と言われていましたが同意見です。ウツボカズラを使う必然性はどこにあったのでしょう。

ビダユ料理 竹筒料理の豚肉スープとナマズのタンポヤスープ

「ビカラン」では、ウツボカズラ飯とともに竹筒料理の豚肉スープ。そして、ドリアンを発酵させたタンポヤのナマズスープをいただきました。豚肉は皮がついていて、コリコリとした歯応えが美味しく、生姜が効いて、さっぱりとした料理でした。

タンポヤのスープはドリアンの味と香りが高く、臭みは全くなくフルーティー。ナマズも食べやすい白身魚でした。両方ともSサイズ(RM15)を頼みましたが、それでも量は多く、丼になみなみと注がれ、持て余してしまう程。ウツボカズラ飯と汁物でお腹がいっぱいになりました。

皮付き豚肉の竹筒料理 RM15
ナマズのタンポヤスープ RM15
ビカランのメニュー

雨のシニアワンの夜が更けて

ウツボカズラ飯を堪能している間も雨は降り続けていました。辺りはすっかり暗くなり、灯籠の明かりが濡れた地面に映り、幻想的で、それでいてどこか懐かしい、そんな景色でした。

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